金河南

紺青も薔薇薔薇

2020/06/19 (Fri) 15:05:26
満天と
水平線はふるえだし
白墓の光 回転速度を保ちつつ

レーデ レーデ レーデ

照らす

レーデ レーデ レーデ

投げ入れた
薔薇の花束は旅人になる
茨は祈り散り散り 遠くを目指して

レーデ レーデ レーデ レーデ

私の瞼を鐘が打つ

レーデ レーデ

過去から

レーデ

波が

肋骨の空洞を抜け
いつか月に届くことを願う
誰も知らない 理解もできない告白

レーデ レーデ レーデ

砕ける前

私は

レーデ レーデ レーデ

花弁を一枚
棺に埋めた
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kinkanan

Re:紺青も薔薇薔薇

2022/04/21 (Thu) 06:57:49
また

まただ

踏青の季節が来る
呼んでいないのに残酷に来る

懺悔は溶け 土に沈み
許諾があおあおと鳴き声のように萌え

裸足で

白夜まで踊る機械装置

通り過ぎるまで
Pass :
金河南
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Re:紺青も薔薇薔薇

2021/08/11 (Wed) 06:16:11
 天気を売る仕事は大変だ。
 それに気づいたのは、天気屋に転職してから三か月と十日の夜だった。

 私はアパートに帰るなり冷蔵庫を開け、ノンアルコールビールを一気飲みしてゲップを大気に放ち、ガジガジと思う存分頭を掻きながら机の上のガラス壜に顔を近づけた。
 その中には、私が初めて気象庁から買った天気が入っている。
 ――五月雨。
 細く濡れそぼる内部に視線を上下させ、私は定型文を呟く。

「綺麗だな……」

 仕入れ自体は安定している。気象庁から払い下げられたものを買い取る形が約八割で、残りの二割は海外からネットで仕入れる。支払いは月末締め翌月末払いの仮想通貨だから、海外取り引きでも問題はない。どちらかというとお役所仕事の気象庁のほうが、取り引きとしては疲れる。
 問題は販売だった。
 気象予報会社に売るのはもう諦めた。予報的中率の高さがウリのところは、たいてい自社でいい天気屋を雇っていて今更私は必要ない。気象庁からの依頼があればと、買い取りのたびに担当者にアピールしているが、結局のところ使わないから払い下げなのであって、天気のストックは間に合っているらしい。ネット販売は……、私には天気を分割する力はないので、販売できるような小売りの天気は作れない。もちろん別途分割業者に依頼すればできないこともないけれど、気が進まない。

 私は、いつの間にか出ていたため息を空き缶に入れ、手でフタをした。
「……ふふっ、」
 こんなのが売れれば最高なんだけれど、現実は厳しい。
 ため息天気のとなりの壜は、蛍光灯の光をあびながら水滴を落とし続けている。
Pass :
金河南
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Re:紺青も薔薇薔薇

2021/06/28 (Mon) 12:15:09
 ――(機械音)――

     ――(咀嚼音)――

――(輸血開始定刻)――



  ら
     ふ

 る

神の名の元へと急ぎ逝く
民衆の波を逆行して
看取られずに乾涸びていたい


    き
       つ

  ぐ

吐血色の薔薇を跨いでは
なぐさみの歌は虚空に消え
微笑みを貼り付けた人形

いらめく 罪を惑いては


あの日
深くこうべを垂れた マリア像の裏に回った

 み
いくつ しみを取り消して

必ず(咀嚼を拒否して)
報いを(輸血を拒否して)
仇なす(神を拒絶して)

誰も救わない

Pass :
キンカナン

Re: 紺青も薔薇薔薇

2020/12/07 (Mon) 06:53:54
朝靄を風がおい倒し
海水を鳥がついばみ
影は明るく散歩し

道すがら
朝露を含む薔薇を切り
花弁を指がついばみ
轍を紅に まだらに染めて

少年の髪にしぶきが飛んだ
最後の花弁がいちまい
青空に舞った

彼は来たの

来てないよ。朝だもの。来るわけないよ。

何故きったの

切ってないよ。泣いてたんだもの。切るわけないよ。

一斉の船出は

Pass :
金河南
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Re: 紺青も薔薇薔薇

2020/12/03 (Thu) 21:56:22
白夜の海

鴎が鳴いている

夕暮れがわからないのかい
そうだね
此処にはなにもない

かつて心を動かした様々の美しいものが
褪せて乾いた花びらの横に転がっている

鴎が鳴いている

いつからが昨日だろう
Pass :
金河南
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Re:紺青も薔薇薔薇

2020/10/24 (Sat) 20:20:10
冷たい薔薇に雪がひらり
藍色の街を思い出にする
二人の足跡
かき消す風が
別れの未来を旋律にのせて

燃え咲き枯れ果てた夜に
追憶を求めた指先

明日からの痛みを抱えるように
膝に力入れ頭うずめる
一人の瞼に
流れる涙
グラスに沈んだ花びら数えて

失った紺青の朝
戻れると信じてはいない
Pass :
金河南
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Re:紺青も薔薇薔薇

2020/09/24 (Thu) 13:24:06

十字架に誓いの旋律
重ねる薬指
満開に薔薇薔薇
降り注ぐ祝福

白く閉じたまま
横たわるあなたは
何も怖れず
求めもせず
言葉さえ箱庭に捨て
冬を遠くに

あふれだした夜
足をひたし浮かんだ
月は削げて
十字架欠け
目覚めを待ち巡り続け

祈る神さえ消え

ふり解く誓いの唇
首筋に紅
朽ちた薔薇を抱き
果ての夢と沈む

濡れていくこの世界
残るものなどないほど

浸潤は誓いをまぶたに
月灯り揺れ射す
紡がれた終わりを
あなたと二人きりで

紺青は誓いのくちびる
震えた幻
光も届かない
永久なる静かに逝く

Pass :
金河南

Re:紺青も薔薇薔薇

2020/09/20 (Sun) 17:12:04
ひらけた夜が、星に照らされ凪いでいた。
それほど静かな新月なのに、砂におりると繰り返し、素足をしゃらしゃら呼んでいる。
Pass :
金河南

無題

2020/08/31 (Mon) 14:01:33
君とね
花のなか往き 語らいながら
恋と詩
愛のちがい 微笑みのこえ

指さきから
紡がれては

咲いて散り 
また
雨をうけ芽ばえ蕾ひらき

虹のはじめ

君とね
夢のおくまで 踊りあかし過ごそう
目の奥
星はひかり 三日月の口

繋いだ手が もう
解けるときは


Pass :
金河南
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無題

2020/06/25 (Thu) 15:19:24
キミの肌の
鬱血のアトが
白磁の陶器に散った薔薇のように美しかったりする

今夜読むはずの
栞が抜けて
ベッドに潜り込んだ黒猫のように消えてしまったりする

珈琲を飲み
眼球を押すと
シナプスの花火が預言書のように囁いたりする


早朝の散歩は
気持ちがいい
キミを転ばせる罠をそこかしこに仕掛けて
MJ新聞に目を通しながら
誰もいない土手を歩く

クスリを一粒飲んで
苦い想い出を空に浮かばせたら

下唇を舐めて
まるで恋人であるかのように起こしてあげようと思う
Pass :
金河南

カシ様の寝室にて

2020/06/19 (Fri) 15:10:14
今は居ない
空虚な王の寝室にて
象嵌の装飾が施されたテーブルの中にある隠し扉に一枚の紙を見つける。
埃さえひっそりと静まり返った独りきりの窓枠に
蛍光虫がとまっている。
あの虫さえ喋らなければ、何事もなかったかのように仕舞う心づもりで目を通す。
特徴的で誰にもまねできそうにない、懐かしい、王の、癖のある文字。



  薔薇のような美しい女だ。

  カールした黒髪は胸元で踊り、
  豊満な曲線を余すことなく深紅のドレスで包み、
  そのうえ唇から放たれる言葉は刺々しく耳を裂き、
  けれど声色は低く甘く
  余韻が消えて。

  あの夜のような瞳に映ってみたい。
  叩こうとする手を□んでみたい。
  蹴ろうとする足を払ってみたい。
  押し倒して、
  罵ろうとする口をふさいでみたい。

  黒髪を梳き、
  首筋から足の爪先にいたるまで全身に愛を囁き
  痺れながらもそむけた頬に伝う
  拒絶の涙を舐めてみたい。

  きっと、朝露の味がするに違いない。



私は窓の外を、彼女の墓の方角を、見ずにはいられなかった。
王は彼女に恋していたのだ。
周囲にいる全員が、彼女本人でさえも、政治的な戦略とばかり思っていた。
彼女が亡くなったとき、王は姿さえ見せなかったのだから。

この手紙を元に戻したところで、今夜は到底眠れそうにないだろう。
私は
自室に戻ったら気に入りの紅茶を入れようと思い立つ。
王と彼女に想いを馳せれば、何もなくても五杯はいける。
Pass :
金河南

無題

2020/06/19 (Fri) 15:09:09
記念日に
薔薇の花束を買い求め
墓石の前に跪き
所定の位置より涙を垂らすの
三十年後に溝ができ
六十年後に深くなり
千年と待たずとろけます
顔も 思い出せないほど

私 どうして泣いているのかしら
散歩に出ると いつもここに来てしまうの
この 薔薇野の 黒ずんだ石を見ると 涙が出てしまうの
どうしてかしら
どうしてだったかしら
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